痛みがない、外れない入れ歯を目指して
2010.03.04 (Thu)
最近、「コンフォート」という新素材の入れ歯に取り組んでいます。

この「コンフォート」は、入れ歯の内側に柔らかいシリコンを貼り付け、噛んだ時の痛みを出にくくする素材です。
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普通の入れ歯はプラスチックや金属でできていますが、これが歯ぐきと強く当たった場合、歯ぐきに傷ができてしまいます。

もちろん、かみ合わせがピッタリと作られた入れ歯であれば、傷ができることは少ないのですが、特に歯ぐきが弱い方、あごがやせている方だと、精密に義歯を作ってもなかなか痛みがとれないこともあります。
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とても難しい患者さんですね。

こういう場合、歯ぐきとプラスチックの間にクッションをはさむようにすれば、傷ができにくくなるわけです。

上が普通の入れ歯、下がクッション(コンフォート)をしいた入れ歯
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僕も、実際の患者さんで今のところ数名の方にコンフォートを施術しました。

そのうちのお一人にお許しを頂いて、ここに紹介させていただきます。

患者さんは上下とも総入れ歯の方です。

上の入れ歯は問題ないが、下の入れ歯の裏に食べ物がはさまる、そして歯ぐきが痛むということでした。

お口の中を拝見しますと、下の歯ぐきがいたるところ白くなっていて、傷ができやすい状態でした。
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まずは普通どおりに型を取り、かみ合わせを決め、下の入れ歯を新しく作ります。

コンフォートが普通の治療と違うのはここからで、でき上がった入れ歯に、いきなり柔らかい白い材料を貼り付けます。
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この材料はコンフォートではなく、特殊な型取りの材料で、この材料をつけたまま患者さんに入れ歯を使ってもらうと、ちょうどよい形に型が取れるようになっています。

まずは何回か患者さんに来院していただき、この白い材料を張り替えたり、かみ合わせを調整したりして、「痛くない、外れない、よく噛める」という状態を目指します。

この段階で「痛くない、外れない、よく噛める」が達成できれば、白い材料をコンフォートのシリコンに置き換えるだけです。

コンフォート加工をすると、このようになります。少し青っぽく見えますね。
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入れ歯に金属が使われているのは、補強のためです。

コンフォートにして良く噛めるようになると、入れ歯に力がかかり、割れたり壊れたりすることがあるので補強するわけです。

お口の中に入れてみるとこんな状態になります。
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口を開けても簡単には浮き上がってきません。
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もちろん、コンフォートの入れ歯でも調整が必要です。

この患者さんの場合、コンフォートの入れ歯にしてから、痛みがなくなり、入れ歯の裏に食べ物がたまることが少なくなったそうです。


さて、良いこと尽くめのようなコンフォートですが、いくつか注意点もあります。

まず保険がきかないこと。

新しい治療法ですので保険適応ではありません。

実際の治療費は一概には言えませんが、目安としては、総入れ歯で30万円程度です。

ちょっと良いパソコンが買える位の値段でしょうか。

次に、お手入れ方法が普通の入れ歯とは少し違うこと。

コンフォートの入れ歯は普通の入れ歯よりずっと柔らかいので、お手入れ方法が違います。

といっても、面倒なものではありません。この辺は患者さんに詳しくご説明しています。


まだ数名の患者さんですが、普通の硬い入れ歯でなかなか上手くいかない方でも、コンフォートの入れ歯にすると痛みがとれ、よく噛めるようになるようです。

患者さんにそう言って頂けるととても嬉しいです。苦労が吹き飛びます。

(入れ歯で痛みが取れない患者さんは、僕ら歯医者にとっても、すごく責任を感じて辛いんです)

僕自身、手ごたえを感じていますが、もっと検証を進めなくてはいけません。

現在のところ、なかなか良い選択肢の一つだと考えています。


患者さんの写真は当院のもの、説明用の模式図はバイテックグローバルジャパン様のホームページより引用いたしました。
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今度は入れ歯の講習会です
2009.11.29 (Sun)
最近、何かと島外へ出ることが多くなってきました。

院長を引き継いでから2年、ようやく院内が固まってきて、成長のために勉強する時期が来たのでしょう。

せっせとインプットする時期ですね。


今日は入れ歯についての講習会に参加してきました。


午前中はアメリカなどで広く取り入れられている義歯作製のスタンダードな手法(BPSシステム)のお話でした。

合理的な考え方で、いわゆる「職人のカン」に頼らない、すっきりした義歯治療のシステムだと感じました。

是非取り入れたいと思います。


午後は柔らかい素材を使った義歯のお話でした。

柔らかい素材を使った義歯については、以前このブログでご紹介したことがありましたが、その進化版のような材料です。

技術の進歩は早い!!

実はすでにこの材料を使って、何名かの患者さんに義歯を作っています。

まだ出来上がってきてはいないのですが、患者さんも僕自身も、「痛くない噛める義歯」を期待しています。

さてさて、結果はどうなるかな~。
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入れ歯の治療 その2 下の入れ歯が痛い!
2007.09.10 (Mon)
入れ歯を作ったはいいけれど、痛くてぜんぜん使えない、うまく食べられない、という方もいらっしゃるでしょう。

歯がない患者さんにとって、入れ歯はとても大切なものです。
入れ歯を使うことで、食事がおいしく食べられます。お話もしやすくなり、見た目だってもちろん良くなります。

不幸にして足を失った方には義足、目を失われた方には義眼、というように、器具を作り、機能や見た目を回復するのは人間の知恵だと思います。

われわれ歯医者にとっては、患者さんに「入れ歯のおかげで何でも食べられるよ」「歯を治したら、きれいになったって言われます」と言っていただけるのはこの上ない喜びです。

・・・ただ、入れ歯の治療は必ず上手くいくわけではありません。
入れ歯を作るのが非常に難しい患者さんもいらっしゃいます

今回御紹介する患者さんは、何度作り直しても入れ歯が痛いということでいらっしゃいました。

お口の中の写真です。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、あごの骨がやせて、入れ歯を支えにくい形になっています。
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この写真は別の患者さんで、あごの骨がしっかり残っている方の写真です。
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比較のために、あごの骨の部分を線で囲んでみました。
上の写真があごの骨がやせている方、下はしっかり残っている方です。
全然違うことがお分かりいただけると思います。
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あごの骨がやせてしまうと、どうして入れ歯が痛くなりやすいのでしょうか?

当たり前のことですが、入れ歯は、歯ぐきの上に乗っています。
あごの骨がやせると、当然歯ぐきもやせていきます。

さて、ご飯を食べると入れ歯には咬む力が加わります。
その力が伝わって、入れ歯を乗せている歯ぐきは、ギュッと押されることになります。

やせた歯ぐきが押されるのと、しっかりした歯ぐきが押されるのとでは、どちらのほうが歯ぐきが傷つきやすいでしょうか?
もちろん、やせた歯ぐきのほうが圧力が大きくなりますから、傷ができやすくなります。

もうひとつ理由があります。

それは、やせた歯ぐきの上に乗っかっている入れ歯は、動きやすくて外れやすいということです。
入れ歯が口の中でモゴモゴ動きますので、歯ぐきの色々な部分に当たって傷を作ります。

その傷が痛みの原因になるのです。


では、あごの骨がやせてしまったら、どうしようもないのでしょうか?

最近、科学技術の進歩により、入れ歯の材質もさまざまなものが開発されています。
↓の写真をご覧下さい。実際に先ほどの患者さんにお渡しした入れ歯です。
良く見ていただくと、上下の入れ歯で色が微妙に違うのがお分かりいただけると思います。
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実は、下の入れ歯には通常のプラスチックではなく、シリコンという柔らかい素材が使われています。
この素材がクッションとなり、歯ぐきへの圧力を和らげてくれるのです

ちょうど、入れ歯と歯ぐきの間に、座布団をしいたようなイメージですね。
残念ながら保険はききません。

こちらは歯の並んでいる側です。こちらは上も下も見た目は変わりません。
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かみ合わせたところです。
少し専門的になりますが、入れ歯というのはふつう左右対称の形になるものです。
ところが、この患者さんのようにあごの骨が極端にやせてくると、左右でいびつな形になってしまいます。
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もちろん、シリコンを使えば何でも上手くいくわけではありません。
この患者さんの場合も、入れ歯の形、かみ合わせなどを細かく調整しています。
難しい患者さんの場合には、そうしないと痛みがなく何でも食べられる入れ歯はなかなか作れません。

幸いにして、この患者さんでは治療が上手くいき、「色々なものが食べられるようになった」「下の歯が外れにくくなって良かった」とおっしゃっていただけました。

歯医者というのは毎日心労がたまる仕事ではありますが、本当に、患者さんに喜んでもらえると、疲れも吹き飛びます。
この瞬間のために仕事をしているようなものですね。
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入れ歯の治療 ケース1 下の入れ歯が痛い!
2007.03.19 (Mon)
今日は入れ歯の治療について、実際の写真をご覧ください。


「下の入れ歯がどうしても合わなくて痛い」という患者さんです。

患者さんは下の歯が総入歯で、一本も歯がありません。

さらに、写真を見ていただくとお分かりになると思いますが、下あごの歯ぐきがやせてしまって、細いひものようになっています。
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(写真をクリックすると大きくなります)

これでは下の入れ歯が安定しないのも無理のない話です。

こういう歯ぐきだと、痛くない、よく噛める入れ歯を作るのはなかなか難しいです。

きちんと手順を踏んで、患者さんと協力しながらじっくりと入れ歯作りに取り組んでいく必要があります。


1. 大まかな型取りをする
この型からセッコウで模型を作り、どういう入れ歯にするかをよく考えます。

2. 精密な型取りをする
精密な型取りには、写真のようなワク(トレー)を使います。
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この型から作った模型で、実際の入れ歯を作っていきます。

3. 咬み合わせを決める
総入れ歯を作るうえで、いちばん重要といってもいいステップです。
歯がある方にとっては、自分の上下の歯がかみ合う位置が、いちばん自然なかみ合わせである場合が多いです。
しかし総入れ歯の患者さんは歯がありませんから、どういう風に咬み合せればよいか、それを歯医者さんが決めなくてはいけません。
このステップでミスをすると、噛めない、痛い入れ歯になってしまいます。

4. 仮の入れ歯をお口にあわせてみる
もう一歩で入れ歯が完成します。このステップは、最終的なチェックです。
入れ歯が歯ぐきとフィットしているか、咬み合わせに無理はないか、見た目は患者さんにとって満足できるものか、チェックします。

5. 完成
ようやく新しい入れ歯の出来上がりです。
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買ったばかりの靴と同じように、新しい入れ歯も、すぐに馴染むというわけにはいきません。
最初は歯ぐきに強く当たって痛いこともありますので、何度か調整する必要があります。

幸いにして、このケースでは新しい入れ歯に満足していただき、患者さんは今まで食べられなかったものが食べられるようになった、と喜んでいらっしゃいました。

ここまで見ていただいたように、良い入れ歯を作るには、結構手間がかかります。
なかには「忙しいからすぐに作ってほしい」という患者さんもいらっしゃいます。
もちろん患者さんのお仕事や家庭の都合もありますから、私たちはそれに合わせて最善を尽くします。
しかし、いくつかのステップを飛ばして作ると、どうしても入れ歯の精度は落ちます。これは仕方のないことです。


この患者さんの場合は、今後も定期的な咬み合わせのチェックと、残っている上の歯を守るためのメインテナンス(予防管理)を続けていきます。
そうすることで、入れ歯を長く快適に使っていただけると思います。
【記事編集】 |  13:39 |  入れ歯が合わない  | コメント(0) | Top↑